鹿島毅(かしま・つよし)

幅広いコネクティビティで製造業のIXによる価値創出を支援――鹿島 毅(エリクソン・ジャパンCTO)
ODAIBA IX Core/Industrial Transformation(IX)Leaders
産業技術を変革するリーダーたち(No.6)

「5Gのネットワークはコンシューマー向けに伸びているというイメージが強いが、インダストリー領域でも伸びが期待できる。その1つの背景として、世界のセルラーIoTのサブスクリプションが年率10%以上で成長していて、インパクトが強いことがある」。...

2025/02/13

Posted on 2025/02/13

「5Gのネットワークはコンシューマー向けに伸びているというイメージが強いが、インダストリー領域でも伸びが期待できる。その1つの背景として、世界のセルラーIoTのサブスクリプションが年率10%以上で成長していて、インパクトが強いことがある」。こう語るのはエリクソン・ジャパン CTOの鹿島 毅氏である。そうした中で、5Gやローカル5Gがどう使われていくかが、インダストリーの変革(Industry Exchange、IX)の1つの鍵を握るとの見方だ。

「ミッションクリティカルなIoTでは低遅延性能を要求されるようになるほか、IoTでの利用を想定した5G規格のRedCapが日本でも導入されるようになり、5Gのユースケースが広がっていく。一方で、5Gが工場に入っていったり、地下やビルの中での利用が増えたりするようになったとき、特に周波数が高くなるとエリアのカバーが大変になる課題もある」と、鹿島氏は広がりと課題の両面を指摘する。

インダストリアルIoTという文脈で5Gネットワークの使い方を見ていったとき、エリクソンは「エリアを広げて、すべてを5Gの周囲で使いやすくする」(鹿島氏)というスタンスを示すという。製造業から港湾、ガスなどのユーティリティまで、幅広いインダストリアルIoTの活用範囲に対して、通信によるコネクティビティ(接続性)を高めて使いやすくすることで、新しい価値を生み出す支援をする立ち位置である。

だからこそIXに5Gを使うとしても、そのネットワークの選択はユーザーに委ねられる、と鹿島氏は語る。「パブリックの5Gネットワークを使うこともあるし、5G SA(スタンドアロン)方式ならば(物理的なネットワーク上に複数の論理ネットワークを構築する)ネットワークスライシングを利用することもある。さらに完全に独立したネットワークが必要ならローカル5Gを採用することもできる」。ニーズに対応したネットワーク構成が選択できるようになってきたからこそ、事業に新しい価値を生み出すIXに一層役立てられるようになった、というわけだ。

鹿島毅(かしま・つよし)

実際に、グローバルの視点でIXのニーズは増えているという。「グローバルのプライベート5Gの利用は増加しているし、SAでネットワークスライシングを使う産業用途も増えている。また日本でもローカル5Gのライセンスは増え続けている」(鹿島氏)。

一方で鹿島氏は、一例として半導体製造工場についてこう語る。「半導体工場のクリーンルーム内のウエハーの搬送には、頭上に張り巡らせた搬送用レールを使った無人のクリーンルーム用搬送システムが使われることがある。AGV(自動搬送ロボット)の利用とは異なる状況があり、ネットワークを構築するにも製造業ごとの深い理解が求められる」と、IXへの5Gの貢献が一筋縄ではいかないことも明かす。既存の産業や工場よりも、新規の工場などからIXへの対応が進みやすいという現実もあるという。産業界での実情に即したソリューションの提供を実現し、エリクソン・ジャパンとしてIXにおける価値の提供に貢献したい考えだ。

さらに日本から世界へとビジネスを拡大してくエリクソン・ジャパンとして、ローカル5Gやミリ波の活用をIXへの将来の取り組みの視点もある。それは、デバイスなどを製造する日本企業とのパートナーシップでグローバルのIXを推進することだ。「日本製の半導体製造装置は世界中で使われている。製造用のロボットやセンサーなど、日本が得意とする分野は多くある。それらが5Gレディな状態になって世界に出ていくようになれば、工場のデジタル化に必要な機能が提供できるようになる」(鹿島氏)。製造業は、ユーザーとしてIXをエリクソンと実現していくだけでなく、IXを実現するための5Gレディのデバイスを世界に提供する存在にもなる可能性を秘めている。

鹿島毅(かしま・つよし)
鹿島毅(かしま・つよし)

エリクソン・ジャパンCTO
鹿島氏は、来る2025年2月20日(木曜日)に開催されるXGMF・ODAIBA IX Coreワークショップ「ローカル5Gの免許と技術の最先端」の第2部(14:45開始)で話題提供いただく予定です。お申し込みはこちらから

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