生田目瑛子(なばため・ようこ)

「5G×AI」による産業の変革に注力、国内外のローカル5G実用事例も増加中――生田目瑛子(ノキアソリューションズ&ネットワーク 事業開発マネージャー)
ODAIBA IX Core/Industrial Transformation(IX)Leaders
産業技術を変革するリーダーたち(No.5)

「ローカル5Gをはじめとしたプライベートワイヤレスネットワークの需要は、着実に増えている。ノキアは10年以上にわたりプライベートワイヤレスの事業に関わっている中で、すでにグローバルで850社以上の導入実績を重ねている」。...

2025/02/13

Posted on 2025/02/13

「ローカル5Gをはじめとしたプライベートワイヤレスネットワークの需要は、着実に増えている。ノキアは10年以上にわたりプライベートワイヤレスの事業に関わっている中で、すでにグローバルで850社以上の導入実績を重ねている」。こう語るのは、ノキアソリューションズ&ネットワークスでクラウド&ネットワークサービス(CNS)事業部で事業開発マネージャーを務める生田目瑛子氏である。国内でもPoC(概念実証)から実運用に軸足が移りつつあるとの指摘だ。

そうした中で、現在ノキアが重視しているのが、産業用のエッジ機器として提供している「MX Industrial Edge(MXIE)」の活用だという。「MXIE(ミクシー)は、ミッションクリティカルなインダストリアルエッジとの位置づけで、コアネットワークの機能をエッジで提供するだけでなく、産業用のアプリケーションも提供できる」(生田目氏)。AI活用が製造現場でも叫ばれる中で、「インテリジェントなMXIEが現場にあることで、AIと5Gをつなぎ合わせる役割を果たせる。さらにMX Workmateという現場作業員向けの生成AIやLLMを用いたアシスタントアプリのように、AIに特化したアプリも強化している」。

コアネットワークや基地局といったローカル5Gを含めたプライベートワイヤレスの「パーツ」を提供するだけではなく、4G/5G/Wi-Fiを統合し、産業キャンパス向けの完全なデジタル化プラットフォームを提供するMXIEのようなアプリ稼働も可能なエッジの提供に力を入れているのは、ノキアが「Beyond コネクティビティ」を掲げているからだ。生田目氏は、「コネクティビティを提供するだけでは、ビジネスの付加価値やコスト削減、運用効率、持続可能性などの価値が見つけにくい。問題解決や利益拡大を図るには、OTデータ計算機能とAIを活用したアプリケーションなどを組み込んだネットワークが必要になる。ノキアでは『5G×AI』でユースケースをどのように紡いでいくかに注力している」と語る。

生田目瑛子(なばため・ようこ)

一方で、ローカル5Gの現実的なユースケースとして、国内の事例も着実に増えている。「SUBARUが、北海道のスバル研究実験センター美深試験場にローカル5Gの導入で、ノキアのネットワークを採用した。走行中の自動車同士の衝突を防ぐ協調型自動運転に関する試験に向けた検証に利用する」(生田目氏)。高速走行時にも信頼性の高い通信が可能で、全長4kmの周回コースの全周を無線でエリアカバーをするための選択だった。国内のパートナーとして、日鉄ソリューションズ(NSSOL)が導入した事例でもある。「実証実験を通じて、NSSOLをはじめとしたパートナーにも着実に知見が蓄えられてきた成果」(生田目氏)でもある。

国内では、労働者不足や高齢化により自動化や効率化のモチベーションが顕在化している。「5Gやローカル5Gなどのコネクティビティによって、どのような利益増大やコスト削減ができるのか、あるいは人材の更なる有効活用や省エネにつなげられるのか等、差し迫った課題になってきている」(生田目氏)。

海外では、プライベートワイヤレスの多様な事例が先行している。フォルクスワーゲン、ボッシュなどの工場でのAGV(自動搬送ロボット)などの制御や、ルフトハンザ航空の航空機整備へのMR(複合現実)の適用など、大手企業の例を中心に地に足のついた利用が拡大している。ミリ波を活用したプライベートワイヤレスも進展が見られ、例えば最近ではイタリアでの活用事例が具体化しているという。

さらに、「警察や消防などパブリックセーフティの分野では、ベルギーでセルラー技術を使ったノキアのドローンの遠隔制御とデータ伝送が導入されている」(生田目氏)。もっと未来的な用途で、「早ければ2025年2月に、月面にノキアのセルラー技術を利用したプライベートワイヤレス環境が構築される。月面のような過酷な環境でも使えることは、産業用途でのアドバンテージにもなる」と生田目氏は語り、プライベートワイヤレスの今後の広がりを感じさせた。

生田目瑛子(なばため・ようこ)
生田目瑛子(なばため・ようこ)

ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社
クラウド&ネットワークサービス(CNS)事業部
ECEソリューションビジネスセンター・デジタルオートメーションAPJ担当 事業開発マネージャー
生田目氏は、来る2025年2月20日(木曜日)に開催されるXGMF・ODAIBA IX Coreワークショップ「ローカル5Gの免許と技術の最先端」の第2部(14:45開始)で話題提供いただく予定です。お申し込みはこちらから

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